ジャポニスムのデザイナーとなり12年。入社以来ジャポニスムのデザインを笠島と担ってきた脇聡のインタビューです。

簡単な自己紹介と、いつ&なぜメガネのデザイナーになったのか教えてください。

生まれは兵庫県神戸市灘区です。金沢美術工芸大学、大学院を修了後、フリーターを経て2000年に鯖江に来ました。
当初は作家活動を目指していましたが、企業に勤務しても創作活動はできると思い、そこで出会ったのがメガネの企画デザインでした。
鯖江に来てしばらくは大手眼鏡商社の企画部に所属していまして、ボストンクラブには2004年に入社しました。僕自身、目が本当に悪くて、子供の頃からメガネに対するコンプレックスを抱えていたので、そのマイナスなイメージを少しでも減らすべくメガネのデザインの世界に入ったんです。
子供の時から絵を描いたり工作が好きでしたので、細やかなメガネのデザインの世界にのめり込んでいきましたね。

デザインをする上での絶対は何でしょうか?

独りよがりにならない事と、メーカーさんであったり、工場さんであったり、そのプロジェクトにおいて色々と関わりを持っていく上でのコミュニケーション力ですね。自分自身の思い込みや欲求のみでデザインしてしまう事は避けようと思っています。

ジャポニスムは20周年を迎えますが、脇さんがジャポニスムデザイナーになった頃からどう進化してきましたか?

僕がジャポニスムのデザイナーになってから12年ほどですが、その頃はどちらかというとデザインそのものと職人さんや鯖江の技術力を全面に押し出して商品アピールをしていましたが、最近は商品自体の提案だけでなく、モノ+コトの提案、つまりその裏にあるストーリーも、商品を通して伝える様に進化してきたと感じます。
またモノつくりに関しては、10年前は商品化が様々な理由で出来なかったデザインでも、現場の技術も年々進化しているので実現出来る様になりました。
これはとても有り難いことで、メーカーさんから色んな提案を受けることも出てきてやる気も上がるし更なるやりがいを感じています。

逆に変わっていないことはあると思いますか?

メガネを掛ける人に対しての気配りや、使い心地を考えた構造や形状へのデザイン的な考慮ですね。

ジャポニスムデザイナーになってからの一番の思い出は何ですか?

前の会社とボストンクラブの大きく違うところは、デザイナー自身でメーカーさんと打ち合わせをしたり、営業チームと全国の小売店様へ営業にまわることなんです。
デザイナーというと、皆さん、デザインだけをしていると思われるかもしれませんが、ボストンクラブでは企画からデザイン、更にメーカーさんと打ち合わせをしどう量産化するか、そして品質や納期の管理など、ほぼすべてのプロセスにデザイナーが関わっています。
その中でも、小売店様へ商品紹介するための全国行脚は、店舗へ伺ってスタッフさんたちとも直接話ができて、商品に対するフィードバックを直接もらえる貴重な時間なんです。たまにエンドユーザーともお会いしてお話しできたりしますし、最終の買い手の顔が見られるって本当に大事だと思うんです。次の商品開発にも活かせるしなによりモチベーションに繋がります。
あと日本の色々な場所に行けるし美味しいものも食べられるし、楽しいですよね(笑)。

これからどんなメガネを作り、ジャポニスムをどういう風にしていきたいですか?

ジャポニスムは2016年に20周年を迎えます。20年という流れの中でライフスタイルも流行も、本当にあらゆることやモノが変化して、その中でもちろんメガネのデザインもそれに合わせて変化してきました。ですが時代が変われど、使う人がずっと手元に置いておきたくなるようなモノつくりを今後も継続して目指していきたいと思っています。
様々な用件ごとに必要とされる要素を汲み取りながら、美しいモノを作っていきたいです。

京都精華大学での授業はどうでしたか?どんな影響がありましたか?

考えていた以上に体力的にも精神的にも重労働でしたが、熱意ある学生さん達にメガネについて伝えることは非常にやりがいを感じました。
また、学生とは年齢が20近く離れているので、世代が全く違う若者の表現や考え方に新鮮さと驚きを感じましたし、大きな刺激も受けました。これは今後の自分のデザインにとってもいい体験だったと思います。

メガネをデザインすることの特殊さはありますか?どんなこと?

今でこそメガネもファッションアイテムとして取り入れられていますが、そもそもメガネは視力矯正用の道具なので、道具として満たさなければならない条件が第一にあります。そこへ素材に関する知識、製造に関する知識、構造や強度、造形力、市場とのリンク、色彩関係など、様々な要素がプラスされ完成されているため、そのうちの一つでも欠如すると完成度が低くなるという特殊さがメガネのデザインにはあると思います。
メガネは道具ですが、人の顔に掛けられる事でその人の第一印象やキャラクターを決定する力を持つくらい、重要なアイテムになるという特殊なプロダクトです。製造に関しても工程がとても多く複雑で、オートメーション化が出来ないんです。メタルフレームになると、200以上の工程があるんですよ。だから、各工程ごとに必ず人の手が入るという製造スタイルも特殊ですね。

ジャポニスムというブランド名ですが、日本の良さは何でしょうか?

無に有と美を見い出す感性です。

最後に、メガネにとって重要なものは?

機能的な事や見た目などはもちろんとして、掛ける人が幸せになれるかどうかがとても重要だと思います。

脇 聡 ジャポニスムデザイナー
1972年 兵庫県神戸市生まれ
1998年 金沢美術工芸大学修士課程修了
2004年 (株)ボストンクラブ 入社