今までにジャポニスムは、パーツやスタイルごとに最適な技術や加工法を選び、その世界観を表現してきました。新しい技術や素材を追及しそれを柔軟に取り入れることは、ジャポニスムにとってのアイデンティティのようなものです。
素材を吟味することで、質感や仕上がりに様々な変化をもたらし、これまでもアセテートでは表現しきれないデザインを可能にしてきました。素材のセレクトは眼鏡デザインにとって非常に重要なものです。
チタンに始まり、ベータチタン、マグネシウム、ジュラルミン、天然素材の竹、ウッド、べっ甲など、今までに使用した素材、その数はおよそ10種類にもなります。
例えばJN-584(下の写真)のフロント。一見アセテートのようですが、実は「トロガミド」というナイロン系の素材を使用しています。
左はトロガミドのペレット。これを柔らかくして、型に流し込み、右のような形を形成します。
極力細く仕上げたチタン製のリムとテンプルのデザイン性を壊さぬよう、フロントも薄く仕上げたいというデザイナーの思いがありました。
しかし、アセテートをここまで細くしてしまうとちぎれてしまう恐れがあったため、高硬度で非常に軽く、適度な柔軟性を持ち、変形が起きにくいトロガミドを採用したというわけです。
加工方法もアセテートとは異なり、「インジェクション成形」という方法で作られています。
インジェクション成形というのは、簡単に言うとプラスチックを熱で柔らかくし、それを金型に流し込んで固めること技工のことを言い、眼鏡デザインの世界では割と一般的な技術です。
ジャポニスムでもインジェクション成形を使ったモデルは過去にも発表しており、またテンプルやノーズパッドなど、様々なパーツに採用しています。
その中でも人気だったモデルがJNー507。このモデルではテンプルにインジェクション成形を採用し、外側・内側・テンプルエンドと、硬さの異なるナイロンを用いました。
ある程度の硬さを持たせた外側は、アセテート同様に磨きでツヤを出すことができます。これはどうしてもチープな質感に仕上がってしまう、コーティングでのツヤ出しを避けるためです。
内側には少し柔らかめのナイロンを。肌に直接触れるテンプルエンドの内側には、肌あたりと掛け心地を考慮し、さらに柔らかいナイロンを使用しました。
ひとつのパーツの中で、ここまで細かく素材の硬さや質感を振り分けられるのはインジェクション成形だからこそ。
そして、先端を空洞にすることでクッション性を出し、パーツの重さが軽くな見た目も軽くなり、爽快なスポーティさが生まれました。
もう一つの人気モデル、JNー499では、ビンテージスタイルの一山(一体型のノーズパッド)をSNPナイロンという柔らかくて肌に優しい素材を用いてインジェクション成形で作り出し、長時間掛けていても心地よいかたちに仕上げました。
ちなみに、ジャポニスムのメタルフレームに使われている透明のノーズパッドは、なんと「とうもろこし」を原料に作られています。
石油系の成分を含まない自然由来の素材を使っているため、アレルギーの心配がありませんし、除菌効果も期待できます。
またこのノーズパッドは、ジャポニスムオリジナルのかたちで表面積が大きく、表面のなめらかな曲面は様々なかたちの鼻に自然にフィットするよう考えられています。いくら小さくてもジャポニスムの拘りが込められたパーツなのです。
このように、多くの眼鏡フレームに使われているアセテート素材ではなくても、その素材や技術ならではの良さを見極めて最適な場所に使うことで、ジャポニスムのフレームは見ただけでは得られない心地よさや感動を作り出してきました。
様々な目的や、デザイン表現などに合わせて、これからも少しでも良く美しいものをご提供していきます。