Vol.04

セオリーを覆すデザイン

ジャポニスムの立ち上げから現在まで、ほぼすべてのデザインワークに関わってきたデザイナー・笠島博信。彼は20年のあいだ一貫してあるテーマを持ち続けています。

それは「既成概念を壊す」こと。

それまでのものにリスペクトと感謝をしつつも、新たなかたちや価値を創造するために、それは欠かせない作業のひとつだと言います。

Vol.2でご紹介した2002年発表のJN-401がその代表的なモデルで、それまでのアセテートフレームのデザイン概念を破り作り出されました。

まず、アセテートフレーム作りの常識を覆す3D製法(油圧プレス)を採用し、立体的な凹凸をつけたフロントサイドやのリムに強弱のある厚みを持たせるなど、今までに無いフォルムを導きだすきっかけになったモデルです。

そして笠島が入社した当時、アセテートフレームの多くは、平面的なデザインでテンプルはまっすぐなものが多く、長時間掛けているには辛いデザインばかりでした。

そこでまず自分の骨格に合うようなデザインを考えるようになり、欧米人と比べて頭が横に広い日本人の骨格に合うよう湾曲させたテンプルや、平面的な日本人の顔をいかにシャープに見せられるか、ということからデザインをスタートしました。

テンプルの開きをより広くさせ日本人に合う掛け心地を提供するために板バネを採用するなど、JNー401はジャポニスムのエポックメイキングであり、ジャポニスムを表徴するモデルの一つとなりました。

先にご紹介したJN−401はアセテートフレームの構成を打ち破ったモデルですが、2005年に発表したJN-431は、それまでのメタルフレームの常識を覆したモデルです。

これはデザイナーが、ある金型・部品メーカーの社長に呼び出され、そのメーカーさんの技術で作られる様々なパーツや機構を3時間に渡り紹介されたのです。

この社長は昔ながらの気性の荒い方でしたが、技術力はとても高く確実なものを持っている方でした。
「こんなにネタがあるのにどこもこれを活かしたものを作っていない。これでもっと掛け心地のいいメガネを作れ」と言われ、その夜のうちに描き上げたデザインを元にJN−431は作られました。

それまでは、テンプルやフロント部分でバネが効くデザインのものが多く、ジャポニスムのメガネもそうでした。

しかし、更なる「しなやかな掛け心地」を実現させるためには、バネが効く部分をメガネの中央(ブリッジ)方向に持っていく必要がありました。

そのため、それまでのメガネの構造や作り方のセオリーを一切無視し、同時にそれを活かしたフォルムを考え、その社長の技術力を活かし作られたのが、JN-431でした。

それまでにない、マユ部分にバネ構造を持つこのモデルは、ジャポニスムを象徴する「機能が美しく自然な形状に内包された」フレームを代表するモデルとなりました。

その後発表した、JN-431のバネ機構を継承するモデル

JN-460
JN-515
JN-543
JN-570

全体のデザインは違えど、基本となる機構や構造はどれも同じ。
それまでの概念を壊して超越するというコンセプトのもと開発されてきました。





その哲学はデザインや製造法だけでなく、機構に関しても同様です。
今では世界的にもよく見られる機構のひとつとなっている「板バネ」は、バネ性が出るように改良されたテンプル芯のこと。

これは、実はジャポニスムがより良い掛け心地とフィット感を追求し考案し発表したもので、2002年から搭載しています。

もともと、メガネの丁番には中に小さなコイルを入れたバネ丁番というものがありますが、その掛け心地の悪さや壊れやすさに疑問を感じたデザイナーが、より掛けやすくそして単純な構造のバネ機能を目指し作り上げた機構がジャポニスムの板バネです。

写真にあるように、この少しの段差を設けることで板バネがしなりテンプルの開きが大きくなります。結果としてメガネを掛けた時の負担が軽減され快適な掛け心地、フィット感につながります。
それはジャポニスムのメガネを、長時間、心地良く掛けてほしいという思いからうまれた機構で、今ではジャポニスムのアイコンともなっています。

そして、2016年秋、ジャポニスムは再び既成概念を覆すような、まったく新しい構造を持つニューモデル JN-590を発表します。